カラスを知りカラス対策に活かす

コラム8 カラスの習性を利用したカラス対策 その2

この記事を書いたのは

代表取締役 塚原 直樹

博士(農学)

宇都宮大学特任助教

群馬県桐生高校卒業。CrowLab代表取締役。宇都宮大学にて杉田昭栄教授のもと、カラスの音声コミュニケーションの研究に従事し、博士取得。宇都宮大学特任研究員、総合研究大学院大学助教を経て、現在は、宇都宮大学特任助教。カラス研究一筋20年。主な著書にNHK出版『カラスをだます』

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カラスの習性を利用したカラス対策 その2

前回は、カラスの五感を踏まえた対策を紹介した。今回は、「カカシ効果」を利用した対策を提案する。本連載の第一回で説明したように、カラスは警戒心が強く、目新しいものがあると、とりあえず近づかないという行動を選択する。そこで、目新しい刺激を提示することで、カラスの警戒心を煽り、カラスを追い払うという対策だ。

この対策には、重要な点が二つある。一つ目は、視覚や聴覚に強く訴える刺激を使うという事だ。カラスは視覚、特に色覚が優れており、設置物の色を変えるだけでも、カラスは目新しく感じて警戒する。ちなみに、カラスが嫌いな色は知られておらず、黄色が嫌い、もしくは見えない、というのは俗説に過ぎない。ゴミ置場用の黄色のネットが販売され初めた頃は、黄色のネットが目新しく、カラスは「カカシ効果」で忌避したと思われる。おそらく、その様子を見た人達から、カラスは黄色が嫌いとの俗説が生まれたのだろう。閑話休題、重要なのは何色であるかではなく、色の大きな変化だ。最近のゴミ置場のネットは黄色が主流なため、ネットを黄色から青色の物に換えたらカラスが来なくなったという話もある。聴覚に訴える刺激として、猛禽類の鳴き声や人工音を再生するのも効果的である。ただし、これらの刺激による忌避効果は一時的なものであり、暫くすると以前のように荒らされてしまう。定期的に、見た目・設置位置・再生音・再生時間などに変化を与えてやることで、カラスの警戒心を煽り続けることが重要だ。

もう一つの重要な点は、効果が無くなってしまった刺激を、すぐに取り去るという事だ。同じ刺激を使い続けていると、必ずカラスは慣れてしまう。慣れた際に、次々と別の刺激を追加で設置していくと、汎化と呼ばれる現象が起きやすく、もはや別の目新しいものを設置してもカラスは警戒しなくなってしまう。既にカラスが慣れてしまった対策製品でも、置かないよりは置いておいた方が良いだろうと考えてしまうが、これは逆効果で、むしろ慣れを促してしまう。様々なカラス対策製品を至る所に設置しているにも関わらず被害が減らないという現場も少なくないが、これは、カラスに汎化が起こった末期症状とも言え、カラス対策は非常に困難なものとなる。

本コラムは、農業共済新聞2019年12月1週号に掲載された内容を転載しております(一部修正している場合があります)。
紙面は以下よりダウンロードできます。

カラスの生態をもっと詳しく知りたい方に

CrowLab代表の塚原の著書『カラスをだます』では、身近だけど意外と知られていない、誤解されているカラスの生態や、また身近なもので今すぐできるカラス対策なども紹介してますので、ぜひご覧ください。

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代表取締役 塚原 直樹

博士(農学)

宇都宮大学特任助教

群馬県桐生高校卒業。CrowLab代表取締役。宇都宮大学にて杉田昭栄教授のもと、カラスの音声コミュニケーションの研究に従事し、博士取得。宇都宮大学特任研究員、総合研究大学院大学助教を経て、現在は、宇都宮大学特任助教。カラス研究一筋20年。主な著書にNHK出版『カラスをだます』

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コラム一覧

コラム1「カカシ効果とは?」
コラム2「カラスが嫌いな色はあるのか?黄色が嫌いは本当?」
コラム3「カラスの嗅覚は?カラスが嫌がる臭いはあるのか?」
コラム4「カラスは目が良い?優れた視覚をもつカラス」
コラム5「カラス被害と対策の現場」
コラム6「カラスの五感」
コラム7「カラスの習性を利用したカラス対策 その1」
コラム8「カラスの習性を利用したカラス対策 その2」
コラム9「カラスの知られざるおもしろ生態」
コラム10「根本的なカラス対策」
コラム11「2020年、今年はカラス被害が多い?コロナとカラスの関係!?」
コラム12「カラス基礎知識〜日本のカラス、好み、一日、一年、一生〜」
コラム13「カラスの保護について」
コラム14「カラスの音声コミュニケーション」
コラム15「カラスの営巣・産卵・孵化」
コラム16「カラスに襲われた?カラスの威嚇に伴う怪我等を防ぐには?」

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