カラスを知りカラス対策に活かす

コラム11 「2020年、今年はカラス被害が多い?コロナとカラスの関係!?」

この記事を書いたのは

代表取締役 塚原 直樹

博士(農学)

宇都宮大学特任助教

群馬県桐生高校卒業。CrowLab代表取締役。宇都宮大学にて杉田昭栄教授のもと、カラスの音声コミュニケーションの研究に従事し、博士取得。宇都宮大学特任研究員、総合研究大学院大学助教を経て、現在は、宇都宮大学特任助教。カラス研究一筋20年。主な著書にNHK出版『カラスをだます』

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各地でカラス被害が増えています

2020年5月現在、今年度が始まって、多数のカラス被害の相談を受けています。また、例年よりカラスを多く目撃するという話や被害が多くなっているという話も耳にします。我々が「カラス追払い音声貸出サービス」を提供しているある被害現場では、例年5月の終わりくらいからカラスの飛来が始まり、被害が発生するのですが、4月の終わりくらいからカラスの飛来が見られ、危機感を強めています。別の現場ではカラスの飛来が多くなり、音声に慣れるまでの期間が短くなり、音声の交換時期が短くなっています。2年近く観察している宇都宮市内のゴミステーションでは、一度にカラスが8羽も飛来しているのが目撃されました。これまではせいぜい多くても3羽程度です。さて、なぜ今年はカラスが増えていると感じるのでしょうか?

2019年度冬の暖冬の影響により、カラスが増えた?

実際にカラスは増えたのでしょうか?実はその可能性はあります。2019年度の冬は暖冬でした。暖冬であったがゆえに、各地で例年とは異なる動きが観察されました。例えば、通常冬に被害が多発する地域においてあまり被害が発生しない、逆に例年より多くの被害が発生した、被害の時期がずれた、などです。これらは、餌が関係していると思われます。ひとつは、雪の積もる地域において、カラスの冬の重要な栄養源である田んぼの落穂を得やすくなったことが考えられます。本来、雪が積もれば、落穂は得にくくなります。暖冬であるがゆえに、雪が積もらず、落穂を食べることができたはずです。また、暖冬であるがゆえに、気温も高く、カロリーの消費も少なく活動できたと考えられます。本来、カラスは冬に多くが餓死していると考えられます。詳しくはこちらのページをご参照ください。カロリーの消費が少なく、餌も得られれば、餓死する個体も減ります。例年より餓死する個体が減ったことから、春の時点でのカラスの個体数が激増している可能性はあります。

繁殖期で行動が活発に?

一方、カラスの繁殖期は春です。地域により多少時期はずれますが、3月くらいからカラスのペアが巣作りを始め、5月は子育ての時期です。親ガラスはヒナのために、せっせと餌を運びます。鉄塔や電柱、人家のそばの木など、我々の身近に巣を作ることも多く、ヒトとカラスの距離が近く時期でもあります。そのため、カラスを目にする、鳴き声を耳にする機会も多くなります。また、卵を産むためにカロリーは多く必要ですし、ヒナのために頻繁に餌を運ぶ必要もあるので、行動が活発になります。そのため、実際にカラスが増えたかどうかは関係なく、カラスが多くなったと感じることはあるでしょう。

新型コロナウイルスとカラスの関係は?

2020年5月現在、世界で新型コロナウイルスが猛威を奮っております。感染拡大を防ぐため、日本各地でも外出自粛が呼び掛けられ、街にはヒトの姿が減りました。ヒトの姿が減ったことで、特に市街地では都市の野生動物が通常とは違った動きを始めます。本来であれば、滅多に目撃されないような時間帯・場所に野生動物が出現するのです。これは、野生動物がヒトに対する警戒心を持ち、一定の距離を保つわけですが、ヒトが少ないため、例えば日中の繁華街や駅前まで現れるわけです。ちなみに、コロナ発生前でも、ヒトの少ない早朝であれば、繁華街などでも多数のカラスやネズミは目撃されてました。日中のヒトの活動が減ったことで、早朝などヒトの少ない時間帯同様に活動していることが考えられます。

一方、繁華街では、営業自粛により確実にゴミは減っています。そのため、繁華街の餌をあてにしていたカラスにとっては死活問題でしょう。特に、繁華街に巣をかまえたカラスの繁殖に影響が出る可能性があります。繁華街の朝のカラスは、いつもよりも目撃される数が減っている可能性は高いです。反対に住宅街ではゴミが増えています。外出自粛により、自宅で過ごす時間が長くなり、必然的に家庭ゴミの量も増えます。そのため、カラスのゴミ荒らしの被害も増えているのでは、と考えられます。

いずれにしても、今年は例年とは異なる動きになっていることが想定され、いつもは被害がない場所で被害が起きたり、反対に被害が多い場所の被害が減ることもありえます。このように、通常と異なる出来事が起こり、ヒトの動きが変わると、それに併せてカラスの動きも変わってきます。いかに、カラスがヒトと密接に関わっている動物であるかがよくわかるのではないでしょうか?

カラスの生態をもっと詳しく知りたい方に

CrowLab代表の塚原の著書『カラスをだます』では、身近だけど意外と知られていない、誤解されているカラスの生態や、また身近なもので今すぐできるカラス対策なども紹介してますので、ぜひご覧ください。

この記事を書いたのは

代表取締役 塚原 直樹

博士(農学)

宇都宮大学特任助教

群馬県桐生高校卒業。CrowLab代表取締役。宇都宮大学にて杉田昭栄教授のもと、カラスの音声コミュニケーションの研究に従事し、博士取得。宇都宮大学特任研究員、総合研究大学院大学助教を経て、現在は、宇都宮大学特任助教。カラス研究一筋20年。主な著書にNHK出版『カラスをだます』

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