カラスを知りカラス対策に活かす

コラム2 カラスが嫌いな色はあるのか?黄色が嫌いは本当?

この記事を書いたのは

代表取締役 塚原 直樹

博士(農学)

宇都宮大学特任助教

群馬県桐生高校卒業。CrowLab代表取締役。宇都宮大学にて杉田昭栄教授のもと、カラスの音声コミュニケーションの研究に従事し、博士取得。宇都宮大学特任研究員、総合研究大学院大学助教を経て、現在は、宇都宮大学特任助教。カラス研究一筋20年。主な著書にNHK出版『カラスをだます』

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カラスが嫌いな色はあるのか?

「カラスが嫌がる色はあるのか?」カラスに関する講演やセミナーなどで良く聞かれる質問です。これまでの私の研究や経験から、カラスが嫌がる色は99%無いと思います。1%は、「カラスが嫌がる色はない」ことをきちんと科学的に証明することは難しいので、断言できないため、このような表現にしてます。カラスに様々な色や様々な波長の光を見せて、餌を使って学習させた実験がありますが、特定の色や波長の光を選んだことはありませんでした。また、「嫌いな色」や「嫌いな光」をうたった製品の忌避効果検証試験を行なっても、カラスの忌避は見られませんでした。ですので、カラスが嫌いな色や嫌いな光などがあるとはちょっと考えにくいです。

カラスが好きな色はあるのか?

ちなみに「好きな色はあるのか?」という質問ですと、答えるのが難しくなってきます。光っている物を集めるから銀色を好んでいるのではという話がありますが、これは一体どういうことなのでしょうか?この質問には、カラスは優れた色覚を持っていること、そして好奇心が強いから、光っている物に興味を示すのでは、とお答えしております。カラスは大変優れた色覚を持っております。我々ヒトは、色を識別するセンサーを3種類持っています。それぞれのセンサーは、赤・緑・青の波長の光に強く反応し、ヒトは3原色で色を見ているのです。 それに対しカラスは、近紫外線も含めた4種類のセンサーを持っており、4原色で色を見ています。さらにカラスは、油球と呼ばれる特殊なフィルターを網膜に持ち、色の識別の精度を高めています。おそらくカラスは、我々が見ている色の世界とは段違いに色彩豊かな世界を見ているに違いありません。色を識別する能力が高いカラスは、様々に色で光り輝く物に対し興味を抱き、そしてそれをお気に入りの場所に集めているのかもしれません。

カラスは黄色が嫌い?

「カラスは黄色が嫌いなのですか?」という質問を良く受けます。上述通り、カラスが嫌いな色があるとは少し考えにくいです。では、どうして黄色が嫌いという話が広まったのでしょうか?その答えは、弊社顧問の杉田が開発に携わった「黄色いゴミ袋」が関係します。この黄色いゴミ袋ですが、紫外線をカットする特殊な顔料が練りこまれたフィルムを使っております。その結果、我々ヒトには黄色に見えています。なお、ゴミ袋は半透明で我々ヒトは中身が見えます。ちなみに、なぜ紫外線をカットする必要があるのか、そして、カラスにはどのように見えているのでしょうか。実は、カラスは紫外線を認識できます。そして、紫外線に対して非常に高い感度を持っております。カラスは物を識別する上で紫外線が非常に重要です。私の実験で、紫外線の有り無しの光環境下で、ハムとハムの食品サンプルをカラスに選ばせた実験があります。紫外線が有る光環境下では、カラスは本物のハムをほぼ100%選びますが、紫外線が無い光環境下では、本物のハムを選ぶ確率が50%近くになってしまいます。つまり当てずっぽうです。この実験から、カラスは物を見る上で紫外線が非常に重要で有るということが考えられます。そこで、紫外線をカットするゴミ袋は、紫外線がカットされているため、カラスが見ると中身が見えていないのでは、という理屈です。この黄色いゴミ袋を使った実験も行っています。通常の半透明のゴミ袋では、カラスは餌がある場所をピンポイントで突きます。それに対し、この紫外線をカットした黄色いゴミ袋の場合、餌がある場所とは見当違いの場所を突いていました。つまり、我々には見えるゴミ袋の中身が、カラスには見えていないようです。 この黄色いゴミ袋は成果を上げ、様々な自治体指定のゴミ袋として採用されております。その結果、「黄色」が一人歩きし、なぜか、「カラスは黄色が嫌い」という話になってしまいました。カラスが黄色が嫌いではない、という科学的根拠を示すことはできませんが、その可能性は極めて低いと言えます。

カラスの生態をもっと詳しく知りたい方に

CrowLab代表の塚原の著書『カラスをだます』では、身近だけど意外と知られていない、誤解されているカラスの生態や、また身近なもので今すぐできるカラス対策なども紹介してますので、ぜひご覧ください。

この記事を書いたのは

代表取締役 塚原 直樹

博士(農学)

宇都宮大学特任助教

群馬県桐生高校卒業。CrowLab代表取締役。宇都宮大学にて杉田昭栄教授のもと、カラスの音声コミュニケーションの研究に従事し、博士取得。宇都宮大学特任研究員、総合研究大学院大学助教を経て、現在は、宇都宮大学特任助教。カラス研究一筋20年。主な著書にNHK出版『カラスをだます』

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コラム一覧

コラム1「カカシ効果とは?」
コラム2「カラスが嫌いな色はあるのか?黄色が嫌いは本当?」
コラム3「カラスの嗅覚は?カラスが嫌がる臭いはあるのか?」
コラム4「カラスは目が良い?優れた視覚をもつカラス」
コラム5「カラス被害と対策の現場」
コラム6「カラスの五感」
コラム7「カラスの習性を利用したカラス対策 その1」
コラム8「カラスの習性を利用したカラス対策 その2」
コラム9「カラスの知られざるおもしろ生態」
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コラム12「カラス基礎知識〜日本のカラス、好み、一日、一年、一生〜」
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