カラスを知りカラス対策に活かす

コラム２３「VSカラス⑦ 個体減へ地域連携～冬に餌資源の管理を～」

この記事を書いたのは

代表取締役　塚原　直樹

博士（農学）

宇都宮大学特任助教

群馬県桐生高校卒業。CrowLab代表取締役。宇都宮大学にて杉田昭栄教授のもと、カラスの音声コミュニケーションの研究に従事し、博士取得。宇都宮大学特任研究員、総合研究大学院大学助教を経て、現在は、宇都宮大学特任助教。カラス研究一筋20年。主な著書にNHK出版『カラスをだます』。

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捕獲は個体減につながらない

農業現場でカラスの被害を減らすには、ある程度、個体数を管理することは必要だろう。その際、猟銃やおりによる捕獲という手段が取られがちだ。だが、捕獲が個体数管理に寄与し、カラス被害を解決した例はない。繁殖で増える数を上回るほど捕獲することは難しいからだ。
ある地域では毎年1000羽近くを捕獲し続けていたが、被害は全く減らなかった。それだけ捕獲しても、１年で増える数を考えると、焼け石に水なのだ。さらに、捕獲される個体は幼鳥などの弱い個体がほとんどで、冬に飢え死にする個体を前もって捕まえているに過ぎない。

餌資源管理の重要性

ここで、冬の飢え死にに注目したい。冬は極端に食べ物が減り、体温維持に要するエネルギーも多い。摂取カロリーが消費カロリーを下回り、多数が飢え死にすると考えられる。実際、冬に飢え死にしたカラスが大量に見つかる例も多い。
食性を調べた研究によると、冬にフィルムの破片などの人工物を食べた形跡もあり、多くのカラスがヒトの生活に由来する食べ物に頼っている可能性が高い。そこで、畑に放置された作物を埋める、畜舎内を小まめに掃除する、食べ物に物理的にアプローチさせないなど、ヒトの生活に由来する餌資源を冬に管理することを提案したい。期間は１週間程度でよい。カラスは代謝が高く数日間食べられなければ飢え死にしてしまうと考えられるためだ。また、地域で連携して同時期に実施することが重要だ。

短期長期両輪の対策

だが、これらの対策は結果が出るのに時間がかかる。これまで紹介した物理的な侵入防止策や、カラスの警戒心を利用した対策など、短期的な対策で目の前の被害を防ぎつつ、冬の餌資源の管理で長期的に個体数を管理する。この短期と長期の両輪の対策が重要だ。
カラスのことを知れば、捕獲すれば大丈夫、対策品を使えば解決できる、というものではないことが分かるだろう。本掲載が、カラスの生態を正しく理解し、適切な対策を実施するきっかけになれば、何よりの喜びだ。

本コラムは、日本農業新聞2024年12月13日号に掲載された内容を転載しております（一部修正している場合があります）。