カラスとヒトとの摩擦 ~なぜ農業現場に飛来するのか~
コラム29「ストップ鳥獣害⑥ カラスの生態踏まえた鳥インフルエンザ対策」
この記事を書いたのは
代表取締役 塚原 直樹
博士(農学)
宇都宮大学特任助教
群馬県桐生高校卒業。CrowLab代表取締役。宇都宮大学にて杉田昭栄教授のもと、カラスの音声コミュニケーションの研究に従事し、博士取得。宇都宮大学特任研究員、総合研究大学院大学助教を経て、現在は、宇都宮大学特任助教。カラス研究一筋20年。主な著書にNHK出版『カラスをだます』。
個人ウェブサイトはこちら農場単位での対策とその限界
鳥インフルエンザ(HPAI)の発生リスクを減らすカラス対策として、「コラム27」では防鳥網など物理的な対策の重要性と設置のコツを紹介した。また、農場内の衛生管理の重要性にも言及した。これらはHPAIの流行時期に限らず、年間を通した実施が重要だ。カラスに「ここでは簡単に食べ物が得られない」と思わせ、飛来を徐々に減らすことが目的だ。
しかし、個別の農場だけでは不十分で、一農場が徹底しても隣が対策を怠れば、カラスの飛来は十分に減らせない。地域での意識と適切な手段の共有が求められる。
地域への飛来を減らそうと考えた場合、個体数を減らすために捕獲という手段が選ばれることが多い。しかし、カラスの繁殖力や他地域からの流入を考えると、膨大な数を捕獲し続ける必要があり、現実的とは言い難い。
地域全体で取り組む「餌付けストップキャンペーン」
一方、冬は食べ物が得られず多くのカラスが餓死すると考えられている。特に冬は、ヒトの生活に由来する餌資源への依存度が高まる。餌資源を減らすことで餓死を誘発し、個体数の抑制につながる可能性がある。
そこで著者らの提案は「無自覚な餌付けストップキャンペーン」だ。農場内の飼料の散乱や出入り自由な堆肥場は、ある意味餌付けと言える。これらを1週間の徹底管理で餌資源を減らし、自然淘汰を促す。1週間としたのは、カラスは代謝が高く、毎日多くの食べ物が必要で数日食べなければ餓死してしまうからだ。上記の管理は通年実施が望ましいが、1週間であれば現実的に取り組みやすい。また、圃場に放置の農作物の残渣や、未収穫の果実もカラスにとって冬の重要な餌資源となることから、養鶏農家以外も含め、地域で一斉に取り組むとより効果的だ。
これを機に地域で情報交換しカラス対策への意識を高めれば、地域全体へ飛来するカラスの減少、HPAIリスクの軽減にもつながると考えられる。
本コラムは、全国農業新聞2025年7月18日号に掲載された内容を転載しております(一部修正している場合があります)。
カラスの生態をもっと詳しく知りたい方に
CrowLab代表の塚原の著書『カラスをだます』では、身近だけど意外と知られていない、誤解されているカラスの生態や、また身近なもので今すぐできるカラス対策なども紹介してますので、ぜひご覧ください。
この記事を書いたのは
代表取締役 塚原 直樹
博士(農学)
宇都宮大学特任助教
群馬県桐生高校卒業。CrowLab代表取締役。宇都宮大学にて杉田昭栄教授のもと、カラスの音声コミュニケーションの研究に従事し、博士取得。宇都宮大学特任研究員、総合研究大学院大学助教を経て、現在は、宇都宮大学特任助教。カラス研究一筋20年。主な著書にNHK出版『カラスをだます』。
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